西崎病院ブログ

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帯状疱疹の予防注射について

医局抄読会のネタとして、今年から日本でも適応になった帯状疱疹ワクチンを調べてみました。 水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹とは ●水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus, VZV)が原因。飛沫核感染で感染力が強い。 … 続く

医局抄読会のネタとして、今年から日本でも適応になった帯状疱疹ワクチンを調べてみました。

水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹とは
●水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus, VZV)が原因。飛沫核感染で感染力が強い。
●1~10歳ごろに水ぼうそうとして感染する。ワクチンを打っていればかかっても症状は軽い(2回接種でほぼ完全に予防できる)。
●帯状疱疹(Herpes zoster, Shingles)は、子供の時にかかった水ぼうそうのウイルスが、神経節に潜伏して、体調が悪くなった時に再活性化して引き起こされる。

Wikipediaより。知覚神経分布に沿った皮疹と強いピリピリとした痛みが特徴的。
ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9

●治療は、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)の内服だが、1~2日ほど症状を短くする程度。帯状疱疹後神経痛の予防効果はない。腎機能低下や高齢者では副作用が出やすい。値段も高い。

●80歳までに3人に1人が帯状疱疹を発症するという日本のデータあり。6~7人に1人という調査結果も。

●高齢、女性、糖尿病、ステロイドなどの免疫抑制の薬剤などでリスク上昇。(おそらく透析も)
●ウイルスの再活性化では、顔面神経麻痺・Hunt症候群、急性網膜壊死、無発症性帯状疱疹(zoster sine herpate)なども起こる。

帯状疱疹のワクチンについて
●水痘ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)が2016/3に帯状疱疹の予防としての適応が通った。
medical.mt-pharma.co.jp/di/product/bsi/
●添付の溶剤(日本薬局方注射用水)0.7mLで溶解し、通常、その0.5mLを1回皮下に注射する。
●注意!(添付文書より)
接種対象者
**帯状疱疹予防の場合  50歳以上の者を接種対象者とする。ただし、明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者に接種してはならない。(「接種不適当者」、「相互作用」の項参照)
以下は田辺三菱製薬の予診票に添付されている文書です。

ただ、免疫が弱っている人ほど帯状疱疹になりやすいので、ワクチンを打っておきたい。

●2008年のMMWRより「プレドニゾロン換算で20mg/日未満、メトトレキサート0.4mg/kg/週未満なら、水痘ワクチン接種が危険なほどの免疫抑制状態ではないだろう」
www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5705a1.htm
Short-term corticosteroid therapy (<14 days); low-to-moderate dose (<20 mg/day of prednisone or equivalent); topical (e.g., nasal, skin, inhaled); intra-articular, bursal, or tendon injections; or long-term alternate-day treatment with low to moderate doses of short-acting systemic corticosteroids are not considered to be sufficiently
immunosuppressive to cause concerns for vaccine safety. Persons receiving this dose or schedule can receive zoster vaccine. Therapy with low-doses of methotrexate (<0.4 mg/Kg/week), azathioprine (<3.0 mg/Kg/day), or 6-mercaptopurine (<1.5 mg/Kg/day) for treatment of rheumatoid arthritis, psoriasis, polymyositis, sarcoidosis, inflammatory bowel disease, and other conditions are also not considered sufficiently immunosuppressive to create vaccine safety concerns and are not contraindications for administration of zoster vaccine.
ただし米国のワクチンは日本のものは完全に同じではないことに留意、おなじoka株ですが。またステロイドは細胞性免疫を抑制、ワクチンはその細胞性免疫を賦活するので、効果もある程度限定されるかもしれない。

水痘ワクチンの帯状疱疹予防効果
●添付文書より「本剤を高齢者に接種した場合、50~69歳で約90%、70歳台で約85%に水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫が上昇したとの報告がある。」
●2016年のコクランレビュー
ワクチン接種によって帯状疱疹のリスクは0.49(0.43-0.56)と半減した。(最大フォローアップ期間3年、不活化ワクチンのデータも含む)NNTは50。すなわちワクチンを50人打てば、1人が帯状疱疹を予防できる、ということ。
●一度帯状疱疹にかかった人に打つのが再発予防になるかどうかは不明。

まとめ、感想
当院の患者さんのような、高齢の透析患者、糖尿病患者さんは、帯状疱疹の予防注射をすることはメリットが高そう。生ワクチンなのでその辺は注意。もしワクチン接種後に帯状疱疹が出現するなら1~2週後。その辺で皮疹が出たら直ちに抗ウイルス薬を。

その他参考文献
●2015年のNEJMには新しい不活化水痘ワクチンも効果ありと報告(まだ治験段階)。
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1501184#t=abstract

www.cochraneprimarycare.org/pearls/limited-evidence-effectiveness-influenza-vaccine-healthy-adults

www.uptodate.com/contents/prevention-and-control-of-varicella-zoster-virus-in-hospitals?source=search_result&search=%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9&selectedTitle=6%7E150

第2回
西崎健康教室
2016年 8月26日 (金) 午後1時15分~1時45分
     西崎病院 外来待合室
内容  世界の研究からわかったダイエット

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