低ナトリウム血症をざっくり簡単に言うと、体のしお(食塩;塩化ナトリウム)の濃度が下がった状態です。体のしおの濃度は普通は一定(Na正常値:135~145mEq/l)ですが、高すぎたり低すぎたりすると、特に脳の働きが悪くなり、体の元気がなくなり、ひどくなると意識がなくなります。
では、治療はしおをたくさん食べればよいか、というとそんな簡単ではありません。体のしおの濃度は、体の水分量と塩の量のバランスで決まります。ですから、場合によっては塩を取るのではなく、飲む水分量を減らす、という時もあります。まずは、低ナトリウムがなぜ起こったのか、原因を調べてから治療方法を決めます。
だいたい、低ナトリウムの状態は、3パターンが多いです。一つは、①体のしおを貯める能力が落ちてしまって塩が減っている状態、もう一つは②体に水が貯まりすぎてしおが薄くなった状態です。最後は③薬のせいで塩が抜ける状態です。他のパターンもありますが、大体この3パターンで分けると理解しやすいです。
①体のしおを貯める能力が落ちている場合
ヒトを含めた陸上生物は、進化の歴史上、体にしおを貯めようと頑張ってきました。抜けてしまうと困るからです。具体的には、しおを貯めるホルモンを出したり、おしっこの塩分を減らしたりして、塩分を調節しています。年を取るとそのホルモンの出が悪くなり、しおを貯めることができなくなる時があります。ホルモンの検査をして、場合によっては補充をしたりします。
②体に水が貯まり過ぎてしおが薄くなる場合
腎臓が弱ると尿の出が悪くなります。また心臓が弱っても体液の循環がうまくいかず、体に水分が貯まってしまいます。急性腎不全、心不全の時に起こりやすく、利尿薬で体の水分を抜きながら、腎臓、心臓の治療をしていきます。
③薬のせいでしおが抜ける場合
①②とも関係するのですが、薬によってしおが抜ける場合があります。代表的な物に、利尿薬があります。ARB、ACEといった高血圧の薬でも起こるときがあります。
※体内のしおに関係するホルモン
さっきも書きましたが、陸上生物は、基本的にしおを貯めようとしています。ですので、しおを貯めるホルモンはたくさんありますが、しおを抜くホルモンは臨床上では1種類しかありません。
●しおを貯めるホルモン:アルドステロン、コルチゾール、レニンなど
●しおを抜くホルモン:BNP(ANP)
●水を貯めるホルモン:バゾプレシン
このようなホルモンなどを調べながら、低ナトリウム血症の原因追求と、治療方針を考えていきます。
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