糖尿病は心血管障害や腎症などの合併症が怖いことは知られています。また治療をしても完治(寛解)するようなことは少なく、長く付き合っていかなければなりません。それに伴い、ある程度の医療費がかかります。自覚症状がないのに、治療を続けることに疑問を思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、治療はした方が寿命も延び、合併症も少なくなることが分かっています。
日本糖尿病学会は10年ごとに数万人規模の糖尿病患者の寿命や合併症の調査をしています。
2010年の日本の糖尿病4.5万人の調査では、糖尿病患者の平均寿命は男71.4歳、女75.1歳でした。同時代の日本人一般の寿命に比べてそれぞれ8.2歳、11.2歳短命です。しかし2000年の調査の時には、それぞれ9.6歳、13.0歳短命ですし、さらにさかのぼって1980年の調査ではそれぞれ10.3歳、13.9歳も差があったのです。
1990年の調査では、糖尿病の人が脳心血管障害で亡くなる確率は1.5倍、腎障害でなくなる確率は5.6倍ありました。ところが2010年の調査では、それぞれ0.8倍、1.8倍とかなり良くなっています。
アメリカの調査でも1990年から2010年までの20年間で、糖尿病合併症としての発生率は、心筋梗塞67.8%、腎不全28.3%減少しています。
Changes in Diabetes-Related Complications in the United States, 1990–2010
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1310799
現代の医療をきちんと続ければ、糖尿病の合併症はかなり防げるようになりました。
ほったらかしが一番もったいない!
以前の病院でまとめたブログです。
blog.livedoor.jp/blogiinkai-tounyoubyou/archives/17167516.html
参考資料
―糖尿病の死因に関する委員会報告―アンケート調査による日本人糖尿病の死因―2001~2010年の10年間,45,708名での検討―
www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/59/9/59_667/_article/-char/ja/
追記 2017/04/13日のNEJMにスウェーデンの1型、2型糖尿病患者さんの死亡率、心血管による入院の推移が載っていました。
アブストラクトだけしか読めませんが。
20世紀末に比べると、2014年では死亡率、心血管病による入院率は当然減っています。医療の進歩によるものでしょう。特に1型糖尿病の改善度は糖尿病以外の人の改善度に比べてかなり良いです。しかし2型糖尿病の死亡率はあまり良くなっていません。医療は進歩しても生活習慣の改善はまだまだという事でしょうか。
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1608664
Mortality and Cardiovascular Disease in Type 1 and Type 2 Diabetes