西崎病院ブログ

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第95回 南部糖尿病ネットワーク「GL値、食材ダイエットについて」

第95回 南部糖尿病ネットワーク「GL値、食材ダイエットについて」 2019/11/18の勉強会は、豊見城中央病院の行っている食材ダイエットについてお話をしていただきました。 食品のGI/GL値~栄養指導での活用方法の検討~  管理栄養士 神山美和子先生 豊見城中央病院の肥満症への取り組み ~食材ダイエットの提案~  特命副院長 比嘉盛丈先生 GI値(グリセミック・インデックス)とは 各食品の糖質50gをとったときの血糖の上がり具合をブドウ糖をとった時を100として数字で表したもの。白米は80くらい。 GL値(グリセミックロード)とは 各食品の糖質量(g)×GI値÷100  実際に摂取する量を考慮している。 ○食物繊維が多いほどGL値が低い! GL値は、加工食品が高い。未精製の穀物ほど低くなる。 例えば、玄米のGL値は29。白米は46。 糖尿病診療ガイドライン2019の食事療法 これが正しい、という食事療法は個人に当てはめるのは難しそう。「個別化」と「柔軟な対応」を重視。栄養摂取比率については、まだ明確なエビデンスがない、と書かれている。 豊見城中央病院では、GL値を考えた、食材ダイエットに取り組んでいるようです。食べてもインスリン分泌が少なく、太りにくい食材を提案するそうです。比嘉先生の診療、神山先生の栄養指導で、キレイに痩せられるかも! 次回の(2020年1月予定)南部糖尿病ネットワークは、「歯」についての勉強会です。 西崎病院 歯科衛生士より『口腔と全身状態の関わりについて 〜病棟で働く歯科衛生士から伝えられること〜』 南部徳洲会病院 歯科口腔外科 神農悦輝先生より「咀嚼と美と健康」 全身の健康と歯の、ものすごい深い関係(ただいま実感中)、勉強したいと思います。

2019/07/11 第93回南部糖尿病ネットワーク

「高血糖緊急症を考える」

国立病院機構熊本医療センター 糖尿病内分泌内科

西川武志先生

西川先生は、私が熊本大学での師匠で、ミトコンドリアと糖尿病の研究で有名です。今回は、糖尿病ケトアシドーシスや(DKA)や、高血糖高浸透圧症候群(HHS)という、実臨床に即したお話をしていただきました。教科書やガイドラインに書かれていることから、日本でまだエビデンスがなく、今調査している領域の話まで、とても勉強になりました。

 

復習として、教科書的な内容を備忘録として以下にまとめてみます。

 

  1. 高血糖緊急症(hyperglycemic crisis)の病態は?
    1. 糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリンの絶対的不足が原因。
    2. 高血糖高浸透圧症候群は、インスリンの相対的不足が原因。

 

  1. 糖尿病ケトアシドーシスの診断基準2.アシドーシス(pH7.3未満、HCO3 18未満)静脈血ならHCO3 15未満。
  2. 3,ケトーシス(βヒドロキシ酪酸の増加)
  3. 1.高血糖(250以上)

 

  1. 高血糖高浸透圧症候群の診断基準
  1. 高血糖600以上。
  2. 有効浸透圧320以上
  3. Hは7.3以上、 HCO3は18~20

※血漿浸透圧と有効浸透圧は違う!

  • 血漿浸透圧≒2×NaGlu/18BUN/2.8

2つの溶液間での相対的な浸透圧活性、水の移動を起こす力を有効浸透圧、または張度という。尿素やアルコールは浸透圧に寄与しうるが、細胞膜を自由に通過しうるので、細胞内液と細胞外液感の浸透圧さを生じさせない。(静脈経腸栄養 Vol.24 No.3 2009 27769))

  • 有効浸透圧≒2×NaGlu/18  ←血漿浸透圧からBUNがなくなる。

ついでに

※偽性低ナトリウム血症

血糖値の上昇100に対してNaは+2として考える。ざっくりですが。補正しましょう。

4.DKAHHSが混ざったような症例もあるようだ。ジョスリンにかかれている。

5.ソフトドリンクケトアシドーシス:2型糖尿病患者が糖を含むドリンクで、血糖がどんどん上がる悪循環から、著しい高血糖とケトアシドーシスをきたす病態。欧米白人での症例報告は殆ど見られない。

 

6.DKAは胃腸症状が出るので、腸炎などと初診されてしまうことがある。体重減少や血糖チェックをするとわかる。

 

7.Ketosis-prone type3 diabetes(ケトーシスになりやすい2型糖尿病)KPDが、意外にいるかもしれない。

 

8.正常血糖ケトアシドーシス:血糖値が300以下で、HCO3 10以下の状態。軽いケトアシドーシスというイメージ。SGLT2阻害薬によるDKAはこれの特徴を持つことが多い。2型でもなるし、1型でもなる。

SGLTによる正常血糖DKAは内服開始すぐに出ることが多い。SGLTを内服中は、尿ケトンをチェックし、陽性の場合はアシドーシスになっていないかチェックすべき。特に全身倦怠や悪心嘔吐がある場合は注意。

 

9.抗PD-1抗体薬による劇症1型糖尿病に注意。あっという間に上がるので、血糖値が高いのにA1Cが低いといって油断しない!入院して様子見ても良い。

 

10.高血糖緊急症は精神科疾患合併症例が多い。

高血糖緊急症の意識レベルは、pHよりも血漿浸透圧と密接な関連がある。

発症時の血漿浸透圧が320未満なら他の意識障害の原因を考えるべきである、とジョスリンに書かれている。

 

11.高血糖緊急症の合併症に血栓症があるようだ(これは教科書にまだ書かれていない?)。脳梗塞はもちろん、下肢の動脈血栓、静脈血栓注意。下肢痛や血小板減少、Dダイマーのモニターを。

勉強会のあとに、南部の糖尿病専門の先生方を交えて食事会をしました。医療の話はもちろん、ワインや燻製、絵の話で大いに盛り上がりました。オレンジワイン美味しかった!

 

2019年1月28日 南部糖尿病ネットワーク

2019年1月28日 南部糖尿病ネットワーク

 

今回の南部糖尿病ネットワークでは、臨床心理士の高橋先生と、リハビリテーション科Drの滝吉先生より講義をしていただきました。

 

備忘録がてら、自分が勉強になったところを自分の言葉でまとめてみました。

高橋先生は日本では恐らく唯一?の糖尿病専門として勤務する臨床心理士だそうです。

1.『患者の人生から考える糖尿病療養支援』

ハートライフクリニック 糖尿病内科心理室 高橋紗也子先生

 

アメリカでは1940年代より1型小児へのサマーキャンプをしていた。(ジョスリンDr

1970年にはCDEがアメリカで始まった。

ジョスリン医療センターの玄関には、患者さんの家で、インスリンや食事の指導をしているCDEの絵が飾られている。

 

知識の伝達型の療養指導(糖尿病教室もコレ)→知識を行動へ動機づけ型→患者の力を引き出すエンパワーメント型へ。

エンパワーメント型は患者さんのことをよく知らないとできない。

エビデンスも大事だが、エビデンスはあくまで平均。

パターナリズム(医療者→患者)から治療同盟(患者⇔医療者)

 

本人の 精神疾患・生活背景・家族関係・生育歴・経済力・知的理解など、こういうのは樹の育つための土壌のようなもの。土壌によって、枝や葉っぱ(糖尿病に対する関わり方)も変わる。枝葉だけじゃなくて、その患者さんの背景も理解して!

 

患者の背景を探るには、会話もよいが、質問紙(PAID質問表)を使うと、数値としてみえるし、変化を追うことができる。質問項目を通して意外な発見もできる。

 

糖尿病の「経験」

絶えざるコントロール:血糖測定・食事時間・食べ方・コントロール。

人生における喪失:身体的・経済的・チャンス、食べる自由など。。。。

将来への不安:合併症への恐怖、老後。。。

科学とは違うのが経験。

 

 

2.『脳卒中後遺症を考慮したDM治療 ~麻痺,嚥下障害.失語症.半側空間無視など~

沖縄徳洲会南部徳洲会病院 リハビリテーション科医長 滝吉優子先生

 

脳卒中の新規発症は30万人/

脳卒中後に寝たきりでもない、認知症でもない、生産年齢の自立した方の復帰が難しい。

勤労者世代の脳卒中患者の80%は退院時予後は治癒または警戒しているにもかかわらず、復職率は51%。

復職コーディネータが介入すると82%まで上昇する!!

 

麻痺対策

カフ付きスプーン、バネ付き箸、返しつき食器(片手でもスプーンでスープなどがうまく取れる←コレ良さそう!)

釘付きまな板(芋などさして使える)

 

失語症

理解できるパンフレット。理解度に注意。なんでもウンウンしていることもある。たまにはNoの質問もしてみる。

 

半側空間無視

茶碗の半分だけ残してしまう。左に視線走査の目印を。一包化しても半分残すリスクに注意。

 

嚥下

歯は大事に!。

とろみをつけると、落ちる経路とスピードが変わる。ムセがへることも多い。

刻みは介護食。誤嚥のリスクになる。歯が悪い人にはいいが、嚥下障害が悪い人には帰って危ない。

ワレンベルグ症候群:歩く嚥下障害。胃ろうのヒトもいる。

 

左の片麻痺は半側空間無視、集中力低下が多い。

右片麻痺は失語症、観念失行が多い。ので鬱になりやすい。知能が落ちているわけではない。

 

脳卒中後などの社会復帰は、本人も家族も我々医療関係者も尻込みしてしまいがちですが、リハビリテーションを通じて、もっともっとやればできるものだと感じました。

 

高橋先生も滝吉先生もエネルギッシュで、とても刺激を受けました。ありがとうございました。

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