日本透析医学会雑誌3月号に透析関連のレビューがあったので、糖尿病などの関連部野を勉強ついでにまとめてみます。
糖尿病について
●2014年のメタ解析ではベースラインHbA1c 8.5%以上では透析患者の死亡リスク増(HR1.14 1.09-1.19)。
●新規透析導入患者ではHbA1c5.4%未満の低値も死亡リスク増(HR1.29, 1.23-1.36)。
ただし、HbA1cは貧血やエリスロポエチン製剤の影響を受けるため、参考程度にしましょうとガイドラインには記述されています。
※2013年血液透析患者の糖尿病治療ガイド
1. 透析開始前の随時血糖値(透析前血糖値)およびグリコアルブミン(glycated albumin:GA)値を血糖コントロール指標として推奨する.
2. ヘモグロビンA1c(HbA1c)値は貧血や赤血球造血刺激因子製剤の影響により低下し,透析患者の血糖コントロール状態を正しく反映しないため参考程度に用いる.
●目標血糖は透析前で(食後2時間として)180~200、目標GAは20%未満。ただし低血糖がある患者ではGA24%未満。(いずれも暫定値)
透析療法と栄養
●カルニチンは注射製剤にて吸収効率改善。
●貧血、左室肥大の改善の報告有り。ただし効果は症例によって大きく異なる。
●メタ解析ではLDLとCRPの減少だけ有意差。貧血の効果ははっきりせず。
貧血領域
●75歳未満ではHgb10~11g/dlの患者に比べてそれ以下では死亡リスク増(9~10ではHR1.42、9未満はHR3.41 )。
●75歳以上ではHgb9未満で初めて死亡リスク増(HR1.95)。
●糖尿病透析患者では年齢に関わらずHgb9未満で死亡リスク増(HR4.60!!)
●ただし、個人の違いも大きく、柔軟にHgb値を管理しましょう。
●高齢CKD患者では貧血治療が必ずしもQOLの改善につながらないかも。
透析患者の心房細動とワルファリン
●日本のガイドラインでは、「透析患者の心房細動にワルファリンは安易にするべきではない。するならINR<2.0に」
●結局よく分からない。
感染症
●血流感染は透析開始直後に多く、年月が経つにつれて減少。
●起因菌は黄色ブドウ球菌43.8%、大腸菌12.6%。一般人と逆。
●MRSAの鼻腔保菌者はムピロシン塗布でMRSAによるカテ刺入部感染が87%減少、MRSAによる菌血症が82%減少(メタ解析)。
●インフルエンザワクチンは全死亡を32%減少、肺炎による死亡を14%減少(メタ解析)。インフル予防注射は打った方が得。
●C型肝炎は透析患者でも内服で完治できるようになった。治療しましょう。
感想
糖尿病の治療も大事ですが、それより貧血をきちんとコントロール(HRが貧血の方が大)。