西崎病院ブログ

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糸満市 西崎病院 西﨑病院 糸満市座波371-1 098-992-0055 講演会

西崎病院の活性化プロジェクト2024 第4回9月6日(金)7日(土)井階友貴先生

第4回西崎病院の活性化プロジェクト2024を開催いたしました。

第4回9月6日(金)7日(土)

講師:井階友貴先生 福井大学医学部地域プライマリケア講座(JCHO 若狭高浜病院/国保和田診療所)教授、 高浜町 健康のまちづくりプロデューサー、総務省 地域力創造アドバイザー

講演まとめ

 井階友貴先生には96日は西崎病院、7日は久米島で講演していただきました。井階先生は2008年から福井県高浜町の診療所で勤務し、診療の傍ら地域住民の健康づくりのために幅広い活動をしてきました。現在では、“まちづくり系医師”と呼ばれ、医療のみならず、地域の活性化のために、住民とともに楽しく、チャレンジングに、そして学術的に活動しています。多岐にわたる活動を紹介するには、60分から90分の講演では足りず、もっと話したかったことが沢山あったように思います。40代前半の若い医師である井階先生からは学ぶことが多く、楽しい中にも感動する内容が詰まっていました。今回も講演の内容を箇条書きでまとめてみました。

 

テーマ:

1.これからの時代に必要なつながりのある健康まちづくり(西崎病院)

2.つながりのチカラを引き出す地域共生社会づくり(久米島)

~持続可能なまちのために~

     自己紹介:2005年滋賀医大卒業後、2008年より高浜町で勤務、2009年福井大学寄付講座教員、2014-15年ハーバード大学客員研究員、2015年より高浜町健康のまちづくりプロデューサー。志向は地域医療、社会医療(健康と地域の在り方)で、高浜町のゆるキャラ「赤ふん坊や」と全国行脚。“まちづくり系医師”と呼ばれている。

    ・ひともまちも元気で、持続可能であるための実践例を、社会医学の実学教員の立場からお伝えします。

    近年のヘルスケアの変遷場所;「病院」「施設」→「地域」、視点;「医療」「介護」→「暮らし」、手段;「サービス」→「支え合い

    ・医療づくりからまちづくりへ:医療者主体の医療づくりの限界→住民主体の医療づくり→地域主体の町づくりへ

    キーワードつなぐSocial Capital)、楽しむBehavioral Economics)、動かすCommunity-Based Participatory Research 

    ソーシャル・キャピタル(Social Capital:「社会関係資本」、人々の結束により得られるもの、「信頼」「社会参加」「つきあい・交流」

    ・研究報告として、互いに信頼できる地域ほど長寿、人々の交流は週1回未満から健康リスクが高まる、“つながり”が健康に影響大、健康の決定要因のうち社会の占める割合は50%以上である、友人の種類が多いほど、歯の数が多い。

    要点その1:自由で対等な地域のつながりで、つながりに満足することなく、ひととまちを健康に!

     行動経済学:一見合理的ではない、現実的な経済活動について研究を行う学問。「直感」「感性」「無意識」「目の前の利益」「楽しさ」「かっこよさ」「美しさ」「おいしさ」等が経済活動を生む。

    ナッジ理論:自然な形で行動変容を促すようにするための理論。ナッジ(nudge)とは「軽くひじ先でつつく、背中を押す、そっと後押しする」という意味。

    要点その2直感に訴える楽しい取り組みで、多くの関心なき人を動かす

     コミュニティメンバーが研究(介入)のすべての段階に主体的に参加(Community-Based Participatory Research(地域社会参加型研究):研究者が地域のメンバーとパートナーシップをとり、一緒の取り組むこと。

    ・地域での協働の発展モデル:“かけはし”づくり=和の拡大 → “なかま”づくり=輪の拡大。

    要点その3地域のメンバーと対等な関係で問題の所在から一緒に考える

     ・これまでの活動:

    まとめ:人口減少時代の「健康のまちづくり

    1. ソーシャル・キャピタル(絆)」で健康分野も他分野も元気に
    2. とにかく皆が「楽しい」取り組み
    3. みんなで」「問題の所在から」
    4. 地域に「とにかく出る・参加する・交流する・支え合う
    5. プロデューサーによる「きっかけづくり」と住民の「主体的活動」

     

    井階先生の著書

     

    西崎病院院長 山城清二

    西崎病院の活性化プロジェクト2024 第3回8月23日(金)24日(土)南眞司先生

    第3回西崎病院の活性化プロジェクト2024を開催いたしました。

    第3回8月23日(金)24日(土)

    講師:南眞司先生南砺市民病院長、南砺市政策参与、(一社)なんと未来支援センター代表理事)

    講演まとめ

     南眞司先生には823日は西崎病院、24日は久米島で講演していただきました。南先生は2007年に南砺市民病院長に就任し、研修制度を立ち上げて医師不足を解消しました。そして、2014年に定年退職後には、南砺市の政策参与として地域包括ケアによるまちづくりに取り組んでいます。今回、元気で幸せに暮らし、愛着があり誇りに思うまちづくりについてご自身の経験からお話していただきました。講演の内容は箇条書きでまとめました。 

    テーマ:1.「安全で安心なまち」は、専門職と行政が中心に構築

        2.「元気で幸せなまち」は、地域住民の思いやりでつくる

     2008年頃の医療崩壊で、住民の安全と安心には必要な医療が求められた。1)質の高い医療、特に高齢者医療、224時間356日受け入れる救急医療、324時間対応する在宅医療の充実。まずは、そのことに取り組み、その実現に至った。そしてその後は、地域の課題に取り組んできた。

     ・高齢入院者の99%は自宅に帰ることを希望していたが、結局66%のみが在宅復帰。この現実から高齢者の思いを叶える地域医療のあり方を考えて取り組んだ。

     ・多職種で、高齢者の尊厳の保持と自立本人および家族の思いを確認し、問題解決型のカンファレンスを続けてきた。

     訪問診療・介護・リハビリ等で中重度者の在宅支援と看取りを充実させた。

     ・一人暮らしの患者さんの対応について、オランダでの研修をうけて、認知症の一人暮らしでも自宅で穏やかに暮らせることが分かった。そして、その取り組みに力を入れるようになった。

     地域共生社会(安心して幸せに暮らせるまち)を地域包括ケアシステム(町ぐるみで助け合う仕組み)で構築。南砺市では安心・安全の基盤はできてきたが、地域で助け合う幸せの構築は現在進行形である。

    ・南砺市では、70代で、同居人がいる女性の自殺率が全国に比べて3倍も高かった。同居者がいても孤食の人は高リスクであった。

     ・介護保険のニーズ調査では、介護度が高いほど不幸せ感が強くなっている。また、日本では社会的孤立がOECDの国のなかではトップである。

     ・人生の誕生期と人生の終末期は、共に重度要介護状態である。また、誕生期は生きがいになる介護で、終末期は誰かに迷惑がかける介護? いや、子供を慈しみ育て親になる子供に介護されることが親の最期の子育てである。

     ・生老病死を地域住民の手に戻すには、時間と縁の力が必要である。

     小規模多機能自治の手法による住民自治の再構築を開始した。住民自治の再構築で、住民同士が助け合いつながり、元気で幸せに暮らせるまちづくりを目指した。

     ・お世話される人の行儀作法を良くする働きかけ、「世話を受けるのは当然」や「迷惑をかけたくない」でなく、弱くなった自分を受け入れて「お世話になります、ありがとう」という文化をつくる。

     ・世話をする人は健康寿命が長いという調査報告がある。「お互い様」「情けは人のためならず」と「役割のない人はいない」ことが科学的に証明された。

     ・現在は、「なんと未来支援センター」、「南砺幸せ未来基金」の「協働のまちづくり支援センター」を設置して地域での取り組みを支援している。

     ・若い医師への心構えと行動指針:1夢と志を持つ事、2覚悟と努力をする事、3謙虚さと感謝の気持ちを持ち続ける事、4.判断、行動の基準は利他である事。

     ピンチはチャンスである

     高齢者養生訓

    第一「病気を予防し悪化を防ごう」

    第二「体と頭を元気にしよう」

    第三「社会貢献し、元気で幸せに生きよう」

    第四「家族介護のあり方を見直し、家族の絆を結ぼう」

    第五「近所や地区の方と交流し、地域の絆を結ぼう」

    第六「尊厳の保持と自立へ、生き方を決め、伝え、歩もう」

                            院長 山城清二

     

    南先生の著書

    西崎病院の活性化プロジェクト2024 第2回8月2日(金)堀田聰子先生による講演:地域共生とはなにか~政策的潮流と支援のかたち~

     

    第2回西崎病院の活性化プロジェクト2024を開催いたしました。

    テーマ:地域共生とはなにか~政策的潮流と支援のかたち~

    講師:慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授 堀田聰子先生

    堀田聰子先生には82日は西崎病院、3日は久米島で講演していただきました。

    学び続けるネットワーク、個々のつながりが大事であることを再認識しました。講演の内容を箇条書きでまとめました。     

    ・介護保険創設前の老人保健・医療政策:1960年代(高齢化率5.7%)老人福祉法制定、1970年代(高齢化率7.1%)老人医療費無料化、1980年代(高齢化率9.1%)老人保健法制定、ゴールドプラン、2000年代(高齢化率17.3%)介護保険法施行

    ・介護保険制度の理念:第一条 尊厳を保持し、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように制定(理念)。第四条 国民は常に健康の保持増進に努める、有する能力の維持向上に努める(義務

    自立とは何か。自分でできる、きめる等の能力主義でいいのか。すると、年を取ると自己効力感が下がる。本当は、“自立とは依存先を増やすこと”(東大熊谷先生)ではないのか。

    ・高齢化の状況の地域差:大都市部では75歳以上の人口が増える。すると、病院に通えなくなり、介護が必要になる人が増える。それに対応するマンパワーが不足する。

    地域包括ケアシステムの構築2003に国レベルで言われるようになった。2025年を目途に住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように。

    ・地域包括ケアの2つのコンセプト:①地域を基盤とするケア(community-based care)、②統合ケア(integrated care)。地域における最適を地域が自ら選ぶことが重要。

    医療モデルから生活モデル化へ。

    ・現代社会の暗い側面:社会的孤立の状況がOECDの中で日本が一番高い。複合化・複雑化する生活課題(生活困窮者の約6割が複合的課題を抱え、16%5つ以上の課題を持っている)。地域の関係性の低下が指摘されている。子供が声を上げにくい(ヤングケアラーの問題)。自殺者が増えており、医療が最後の絆になっている場合が多い。生活し難い世の中になってきている。

    地域包括ケアシステムから地域共生社会へ:定年後の活動が低下、周囲には耕作放棄地、管理放棄された森林、空き家/空き店舗、団地の高齢化など課題。そこで、地域共生社会が求められている。介護予防以外にもう一つの予防、地域で「つながる」こと、その強化が必要。

    事例:東京太田区の“みま~も”(高齢者見守りネットワーク)。 牧田総合病院の地域包括センターが始まった。根っこは、学び続ける会であった。そこからいろいろは取り組みが始まった。そして、つながるネットワークができた。その他の事例では、東近江市、久留米市等がある。(インドのケララモデルは、久米島の講演の時に紹介)

    幸せの4つの因子:個人の在り方(①やってみよう、②なんとかなる、③ありのままに)、関係性の質(④ありがとう(つながりと感謝の因子))

    *なんくるなるいさ~:沖縄でよく使われる。本当の意味は、“まくとーそーけーなんくるないさ”で、“正しいことを、誠のことをしていればなんとかなるさ”という意味である。つまり、人事を尽くして天命を待つという意味に近い。

                           院長 山城清二

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