西崎病院ブログ

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健康講話 尿たんぱく 生活習慣病 腎臓 西﨑病院 糸満市座波371-1 098-992-0055 食塩摂取量

糖尿病腎症・慢性腎臓病の話 4月28日西崎健康教室

偶数月の第4金曜は西崎健康教室  日 時:2017年4月28日(金) 13:15~13:45  場 所:西崎病院外来待合室  内 容:慢性腎臓病(CKD) 腎臓病の早期発見のために

●定期的に、検尿をしましょう。

●検尿でも「微量アルブミン」という特別な項目が大事です。(糖尿病では3ヶ月に1回検査できます)

●普段の検尿では、尿たん白が陽性(+)に出たら、黄色信号です。

●尿潜血は腎臓病とはあまり関係無いことが多い。ただし一度はちゃんと検査を。また尿たん白と同時に出たときは、特殊な腎臓病のチェックが必要です。

●採血でeGFR(腎臓の性能)を調べましょう。 腎臓病が出てきたら早期治療しましょう! ●第一に、血圧を130/80未満にする。(高齢者はまず140/90未満)

●第二に、HbA1cを7%未満にする。 ●第三に、塩分制限をする。1日6g未満。 ●第四に、禁煙をする。

●第五に、コレステロール、高尿酸血症をきちんとする。

●第六に、すこしお酒は飲んでよい。

 

以下、患者さん向けのスライドです。わかりやすくするためにざっくりと説明しています。 (4月25日改変) 医局抄読会補足 ● 顕微鏡的血尿単独は,蛋白尿とは独立した末期腎不全の危険因子である.ただし蛋白尿に比較してリスクは低く,健診などを利用した定期的な経過観察を推奨する. ● 同程度の蛋白尿では,血尿を伴うほうが末期腎不全のリスクが増加する. ●顕微鏡的血尿を伴う高齢者では尿路系悪性腫瘍の頻度が高く,スクリーニング検査(腹部超音波,尿細胞診,膀胱鏡など)を推奨する. (クレアチニンによる)eGFRは、筋肉量や体格が小さいと本来より良く見えてしまう。 シスタチンCによるeGFRは余り影響を受けない。痩せた小さな方にはシスタチンCを。 CKDガイド2012では高齢者は血圧を110未満にしない、とあり。2013では、個々の患者の低血圧症状や臓器の虚血を判断して降圧すべきで、下限値は決められない、となった。 顕性腎症以降では,腎症進展に対する厳格な血糖コントロールの効果は明らかではない. ARB、ACEなどの降圧薬が、低Naを引き起こし得ることにも注意。 低Na自体も生命予後悪化のマーカーとの報告あり。どちらを優先すべきかはエビデンスはまだ無いはず。 参考資料 CKDガイドライン2013、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2016、保存期C K D 患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き、慢性腎臓病に対する食事療法基準2014、高血圧治療ガイドライン2014、医師・コメディカルのための慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル2015、腎機能別薬剤投与方法一覧(日本腎臓病薬物療法学会編)

糖尿病は治療する方が得

糖尿病は心血管障害や腎症などの合併症が怖いことは知られています。また治療をしても完治(寛解)するようなことは少なく、長く付き合っていかなければなりません。それに伴い、ある程度の医療費がかかります。自覚症状がないのに、治療を続けることに疑問を思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、治療はした方が寿命も延び、合併症も少なくなることが分かっています。

日本糖尿病学会は10年ごとに数万人規模の糖尿病患者の寿命や合併症の調査をしています。
2010年の日本の糖尿病4.5万人の調査では、糖尿病患者の平均寿命は男71.4歳、女75.1歳でした。同時代の日本人一般の寿命に比べてそれぞれ8.2歳、11.2歳短命です。しかし2000年の調査の時には、それぞれ9.6歳、13.0歳短命ですし、さらにさかのぼって1980年の調査ではそれぞれ10.3歳、13.9歳も差があったのです。

1990年の調査では、糖尿病の人が脳心血管障害で亡くなる確率は1.5倍、腎障害でなくなる確率は5.6倍ありました。ところが2010年の調査では、それぞれ0.8倍、1.8倍とかなり良くなっています。

アメリカの調査でも1990年から2010年までの20年間で、糖尿病合併症としての発生率は、心筋梗塞67.8%、腎不全28.3%減少しています。
Changes in Diabetes-Related Complications in the United States, 1990–2010
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1310799

現代の医療をきちんと続ければ、糖尿病の合併症はかなり防げるようになりました。
ほったらかしが一番もったいない!

以前の病院でまとめたブログです。
blog.livedoor.jp/blogiinkai-tounyoubyou/archives/17167516.html

参考資料
―糖尿病の死因に関する委員会報告―アンケート調査による日本人糖尿病の死因―2001~2010年の10年間,45,708名での検討―
www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/59/9/59_667/_article/-char/ja/

追記 2017/04/13日のNEJMにスウェーデンの1型、2型糖尿病患者さんの死亡率、心血管による入院の推移が載っていました。
アブストラクトだけしか読めませんが。


20世紀末に比べると、2014年では死亡率、心血管病による入院率は当然減っています。医療の進歩によるものでしょう。特に1型糖尿病の改善度は糖尿病以外の人の改善度に比べてかなり良いです。しかし2型糖尿病の死亡率はあまり良くなっていません。医療は進歩しても生活習慣の改善はまだまだという事でしょうか。

www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1608664
Mortality and Cardiovascular Disease in Type 1 and Type 2 Diabetes

糸満市健康推進課との慢性腎臓病・糖尿病個別連携会議

7月11日に糸満市健康推進課のスタッフの方と連携会議を行いました。特定健診などで指導をする際のコツや悩みなどを話し合いました。結構鋭い質問で大変でした。 勉強したことをまとめてみます。 ●中性脂肪が1000mg/dlを超えるような人への指導… 続く

7月11日に糸満市健康推進課のスタッフの方と連携会議を行いました。特定健診などで指導をする際のコツや悩みなどを話し合いました。結構鋭い質問で大変でした。
勉強したことをまとめてみます。

●中性脂肪が1000mg/dlを超えるような人への指導
中性脂肪が1000(500~という本も)を超えると急性膵炎のリスクが高くなる。もしアルコールあるなら減らしましょう。それでも高いならフィブラート系の内服を(あまりエビデンスなし)。
中性脂肪が500弱なら内服なしもあり?(中性脂肪を下げることで心血管疾患がよくなるというエビデンスが少ない)。
なので、まずは中性脂肪以外のLDL、血圧、肝機能(アルコール)などチェック。血管や寿命に与える影響は、中性脂肪よりもそっちがはるかに高いので、そっちを優先して指導を。

●空腹時血糖が120mg/dlと比較的高いのに、HbA1cが4~5%と良い人は指導すべきか?
貧血や異常ヘモグロビン症などでHbA1cと血糖がかい離することはありますが。。。。
本当に空腹時血糖だったのか、まずは再検査?気になるなら75gブドウ糖負荷試験をしてもよいかも。
(補足)平均血糖≒(HbA1c-2)×30。

●心電図の「完全右脚ブロック(のみ)」はどうすべきか?
循環器の神山先生と話しましたが、基本的はほぼ心配ない、とのことですが、「日本人間ドック学会 心電図健診判定マニュアル」ではC判定になる。
健診で心電図をすることの意義についての話も。なかなか難しい。。。
www.choosingwisely.org/patient-resources/health-checkups/

はっきりと答えられるようなものはなく、議論しながらお互い勉強した、という感じです。しかしとても勉強になりました。今後も定期的にこのような会議ができればと思います。

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