西崎病院ブログ

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2016年7月

帯状疱疹の予防注射について

医局抄読会のネタとして、今年から日本でも適応になった帯状疱疹ワクチンを調べてみました。 水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹とは ●水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus, VZV)が原因。飛沫核感染で感染力が強い。 … 続く

医局抄読会のネタとして、今年から日本でも適応になった帯状疱疹ワクチンを調べてみました。

水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹とは
●水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus, VZV)が原因。飛沫核感染で感染力が強い。
●1~10歳ごろに水ぼうそうとして感染する。ワクチンを打っていればかかっても症状は軽い(2回接種でほぼ完全に予防できる)。
●帯状疱疹(Herpes zoster, Shingles)は、子供の時にかかった水ぼうそうのウイルスが、神経節に潜伏して、体調が悪くなった時に再活性化して引き起こされる。

Wikipediaより。知覚神経分布に沿った皮疹と強いピリピリとした痛みが特徴的。
ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9

●治療は、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)の内服だが、1~2日ほど症状を短くする程度。帯状疱疹後神経痛の予防効果はない。腎機能低下や高齢者では副作用が出やすい。値段も高い。

●80歳までに3人に1人が帯状疱疹を発症するという日本のデータあり。6~7人に1人という調査結果も。

●高齢、女性、糖尿病、ステロイドなどの免疫抑制の薬剤などでリスク上昇。(おそらく透析も)
●ウイルスの再活性化では、顔面神経麻痺・Hunt症候群、急性網膜壊死、無発症性帯状疱疹(zoster sine herpate)なども起こる。

帯状疱疹のワクチンについて
●水痘ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)が2016/3に帯状疱疹の予防としての適応が通った。
medical.mt-pharma.co.jp/di/product/bsi/
●添付の溶剤(日本薬局方注射用水)0.7mLで溶解し、通常、その0.5mLを1回皮下に注射する。
●注意!(添付文書より)
接種対象者
**帯状疱疹予防の場合  50歳以上の者を接種対象者とする。ただし、明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者に接種してはならない。(「接種不適当者」、「相互作用」の項参照)
以下は田辺三菱製薬の予診票に添付されている文書です。

ただ、免疫が弱っている人ほど帯状疱疹になりやすいので、ワクチンを打っておきたい。

●2008年のMMWRより「プレドニゾロン換算で20mg/日未満、メトトレキサート0.4mg/kg/週未満なら、水痘ワクチン接種が危険なほどの免疫抑制状態ではないだろう」
www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5705a1.htm
Short-term corticosteroid therapy (<14 days); low-to-moderate dose (<20 mg/day of prednisone or equivalent); topical (e.g., nasal, skin, inhaled); intra-articular, bursal, or tendon injections; or long-term alternate-day treatment with low to moderate doses of short-acting systemic corticosteroids are not considered to be sufficiently
immunosuppressive to cause concerns for vaccine safety. Persons receiving this dose or schedule can receive zoster vaccine. Therapy with low-doses of methotrexate (<0.4 mg/Kg/week), azathioprine (<3.0 mg/Kg/day), or 6-mercaptopurine (<1.5 mg/Kg/day) for treatment of rheumatoid arthritis, psoriasis, polymyositis, sarcoidosis, inflammatory bowel disease, and other conditions are also not considered sufficiently immunosuppressive to create vaccine safety concerns and are not contraindications for administration of zoster vaccine.
ただし米国のワクチンは日本のものは完全に同じではないことに留意、おなじoka株ですが。またステロイドは細胞性免疫を抑制、ワクチンはその細胞性免疫を賦活するので、効果もある程度限定されるかもしれない。

水痘ワクチンの帯状疱疹予防効果
●添付文書より「本剤を高齢者に接種した場合、50~69歳で約90%、70歳台で約85%に水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫が上昇したとの報告がある。」
●2016年のコクランレビュー
ワクチン接種によって帯状疱疹のリスクは0.49(0.43-0.56)と半減した。(最大フォローアップ期間3年、不活化ワクチンのデータも含む)NNTは50。すなわちワクチンを50人打てば、1人が帯状疱疹を予防できる、ということ。
●一度帯状疱疹にかかった人に打つのが再発予防になるかどうかは不明。

まとめ、感想
当院の患者さんのような、高齢の透析患者、糖尿病患者さんは、帯状疱疹の予防注射をすることはメリットが高そう。生ワクチンなのでその辺は注意。もしワクチン接種後に帯状疱疹が出現するなら1~2週後。その辺で皮疹が出たら直ちに抗ウイルス薬を。

その他参考文献
●2015年のNEJMには新しい不活化水痘ワクチンも効果ありと報告(まだ治験段階)。
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1501184#t=abstract

www.cochraneprimarycare.org/pearls/limited-evidence-effectiveness-influenza-vaccine-healthy-adults

www.uptodate.com/contents/prevention-and-control-of-varicella-zoster-virus-in-hospitals?source=search_result&search=%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9&selectedTitle=6%7E150

第2回
西崎健康教室
2016年 8月26日 (金) 午後1時15分~1時45分
     西崎病院 外来待合室
内容  世界の研究からわかったダイエット

歯周病を治療するとHbA1c0.36%改善する(かもしれない)

糖尿病患者に対する歯周病治療ガイドライン2014を読み返す機会があったので、まとめてみます。 ●HbA1c9%以上だと歯周病悪化が顕著になる。 ●歯周治療によってHbA1cが改善するかどうかは、はっきりしていないが、歯周治療が効く糖尿病患者… 続く

糖尿病患者に対する歯周病治療ガイドライン2014を読み返す機会があったので、まとめてみます。

●HbA1c9%以上だと歯周病悪化が顕著になる。
●歯周治療によってHbA1cが改善するかどうかは、はっきりしていないが、歯周治療が効く糖尿病患者群が存在すると思われる。(高感度CRPが高いような重度の歯周病をもつ糖尿病患者なら効果あるか?)
●糖尿病患者に歯周基本治療を行う際でも、菌血症に対する対処は特に必要ない。
●ただし血糖コントロールが不良な患者では、術前術後の抗菌薬の予防投与を行うことが望ましい。顕性尿たんぱくが陽性の患者はなおさら注意。
●歯周外科治療などの観血処置を行う際は、HbA1c7%未満を目標とする。
●糖尿病患者に対してインプラントを行う際は、血糖コントロール、罹病期間、合併症の有無などを考慮すべき。

参考文献
日本歯周病学会
www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_diabetes.pdf

沖縄県南部地区歯科医師会にも糖尿病と歯周病がまとめられています。
nanshi-oki.org/kiji/tounyou.php

2015年のコクランレビューです。
onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD004714.pub3/full
ここでは歯周病治療によって0.29%改善するかも(エビデンスは弱いけど)、となっています。

糸満市健康推進課との慢性腎臓病・糖尿病個別連携会議

7月11日に糸満市健康推進課のスタッフの方と連携会議を行いました。特定健診などで指導をする際のコツや悩みなどを話し合いました。結構鋭い質問で大変でした。 勉強したことをまとめてみます。 ●中性脂肪が1000mg/dlを超えるような人への指導… 続く

7月11日に糸満市健康推進課のスタッフの方と連携会議を行いました。特定健診などで指導をする際のコツや悩みなどを話し合いました。結構鋭い質問で大変でした。
勉強したことをまとめてみます。

●中性脂肪が1000mg/dlを超えるような人への指導
中性脂肪が1000(500~という本も)を超えると急性膵炎のリスクが高くなる。もしアルコールあるなら減らしましょう。それでも高いならフィブラート系の内服を(あまりエビデンスなし)。
中性脂肪が500弱なら内服なしもあり?(中性脂肪を下げることで心血管疾患がよくなるというエビデンスが少ない)。
なので、まずは中性脂肪以外のLDL、血圧、肝機能(アルコール)などチェック。血管や寿命に与える影響は、中性脂肪よりもそっちがはるかに高いので、そっちを優先して指導を。

●空腹時血糖が120mg/dlと比較的高いのに、HbA1cが4~5%と良い人は指導すべきか?
貧血や異常ヘモグロビン症などでHbA1cと血糖がかい離することはありますが。。。。
本当に空腹時血糖だったのか、まずは再検査?気になるなら75gブドウ糖負荷試験をしてもよいかも。
(補足)平均血糖≒(HbA1c-2)×30。

●心電図の「完全右脚ブロック(のみ)」はどうすべきか?
循環器の神山先生と話しましたが、基本的はほぼ心配ない、とのことですが、「日本人間ドック学会 心電図健診判定マニュアル」ではC判定になる。
健診で心電図をすることの意義についての話も。なかなか難しい。。。
www.choosingwisely.org/patient-resources/health-checkups/

はっきりと答えられるようなものはなく、議論しながらお互い勉強した、という感じです。しかしとても勉強になりました。今後も定期的にこのような会議ができればと思います。

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