西崎病院ブログ

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2016年5月

低血糖性昏睡と高血糖緊急症

内科学会誌の2016年4月号が「内分泌・代謝疾患の救急~初期対応のポイント~」という特集のまとめです。 低血糖性昏睡 ●重症低血糖を来す非糖尿病患者の基礎疾患は、低栄養、アルコール中毒、胃切除後、感染症など。 ●低血糖でのグルカゴン反応は、… 続く

内科学会誌の2016年4月号が「内分泌・代謝疾患の救急~初期対応のポイント~」という特集のまとめです。

低血糖性昏睡
●重症低血糖を来す非糖尿病患者の基礎疾患は、低栄養、アルコール中毒、胃切除後、感染症など。
●低血糖でのグルカゴン反応は、2型糖尿病でも長期的には失われ、主としてアドレナリン分泌が血糖上昇に関与する。
●低血糖を頻回に起こしたり、慢性的にゆっくりと低血糖が出現した場合、無自覚性低血糖が起こる(HAAF;hypoglycemia-associated autonomic failure)。
●健常人では空腹時でも70mg/dl以下にはほとんどならない。従って症状の有無にかかわらず、血糖70mg/dl以下は低血糖として対処。
●糖尿病薬以外の低血糖を起こしやすい薬剤 シベンゾリン、ニューキノロン、ARB、否定形向精神薬、ST合材(西崎病院ではバクトラミン)など。
●低血糖性昏睡になって数時間上経過した場合は脳浮腫の可能性あり、90分以上経過している症例にはグリセオール(果糖含有)の投与も考える。

アメリカ糖尿病学会、内分泌学会共同の糖尿病低血糖に関する指針(2013)
blog.livedoor.jp/blogiinkai-tounyoubyou/archives/17163439.html

低血糖関連自律神経障害を改善させるアプローチ(表1)

血糖測定をして血糖を調節
●自己血糖を、食前、眠前、何かおかしい時に測る。
●週に3回は、午前2時と5時にも血糖を測る。
●食前血糖値を100~150mg/dlになるように調節する。

患者教育
●無自覚性低血糖がさらに低血糖の再発を起こすことを教える。
●低血糖を避けることが、無自覚性低血糖をなくす事につながることを教える。
●早期の低血糖症状にきちんと反応して対処するのが大事であることを教える。

食事介入
●適切なカロリーを摂取する。
●食間と寝る前のおやつを勧める。
●ブドウ糖をいつでも手元に置いておく。
●もし飲めるなら、適度なキサンチン飲料を考慮する。

運動カウンセリング
●運動前、運動中、運動後に自己血糖測定をする。
●血糖が140mg/dl以下なら、運動前にカロリー摂取する。
●運動中、運動後にも血糖が140mg/dl以下なら、カロリーを追加する。

治療法の調整
●インスリンの量を目標血糖値になるように調節する。
●食間の低血糖予防のために、ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラなどの超速効型インスリンを使用する。
●夜間の低血糖予防のために、ランタス、レベミル(+当院ならトレシーバ)の基礎インスリンアナログを使う。
●必要に応じてインスリンポンプによる持続注入(CSII)を考慮する。
●持続血糖測定(CGM)を考慮する。

その他、低血糖と運転に関連する資料
www.dm-net.co.jp/calendar/2013/020463.php
低血糖と運転免許 安全に運転するための7ヵ条
www.jds.or.jp/modules/education/index.php?content_id=38
無自覚性の低血糖症(人為的に血糖を調節することができるものを除く)」を呈するおそれがある患者の自動車運転に関する医師のための文書

高血糖緊急症

患者教育(糖尿病の患者さん向け)
●カゼや嘔吐下痢の時(シックデイ)は、主治医に連絡し、指示を受ける。
●インスリンの自己中断は絶対にしてはいけない。
●十分に水分を摂取して脱水を防ぐ。
●食欲のないときは口当たりがよく消化の良いもの(おかゆ、アイスクリームなど)を摂取し、なるべく絶食にならないようにする。
(以上 内科学会誌より参照)

糖尿病性ケトアシドーシス
●血糖値が300mg/dl程度でも起こりうる。
●倦怠感、悪心嘔吐、腹痛などの症状あり。脱水の割にはNa低値、K高値。
●標準治療:最初の1時間で生食500~1000ml。その後は尿量を見ながら200ml/時程度。
●インスリンは超即効型または即効型5単位程度を静注後、5単位/時間程度で持続静注。1時間で血糖が100mlg/dl以上下がらないようにする。
●血糖値が300mg/dl程度になったらカリウム含有輸液に(西崎病院ではソルデム3A)。低カリウム注意。
●1日の総輸液量は5リットル以内に収まることが多い。

高血糖浸透圧症候群
●血糖は600mlg/dl以上が多い。脱水が病態のメイン。インスリンとともに脱水の治療を。

一時救命処置(BLS)について。

5/17日の医局抄読会は、脳外科國吉毅先生による最新の蘇生処置の話でした。4月の病院勉強会で行った内容をざっと紹介していただきました。「見て、聞いて、感じて」というのはもう古いそうです。 以下にJRC蘇生ガイドライン2015で新しく変わった… 続く

5/17日の医局抄読会は、脳外科國吉毅先生による最新の蘇生処置の話でした。4月の病院勉強会で行った内容をざっと紹介していただきました。「見て、聞いて、感じて」というのはもう古いそうです。

以下にJRC蘇生ガイドライン2015で新しく変わったポイントを抜粋しています。

一次救命処置(Basic Life Support:BLS)
-日本蘇生協議会(JRC)ガイドライン2015のポイント〜
JRC蘇生ガイドライン2015のBLSについての重要なポイント
•訓練を受けていない救助者は、119番通報をして通信指令員の指示を仰ぐ。一方、通信 指令員は訓練を受けていない救助者に対して電話で心停止を確露し、胸骨圧迫のみの CPRを指導する。
•救助者は、反応がみられず、呼吸をしていない、あるいは死戦期呼吸のある傷病者に対 してはただちに胸骨圧迫を開始する。心停止かどうかの判断に自信が持てない場合も、 心停止でなかった場合の危害を恐れずに、ただちに胸骨庄迫を開始する。
•心停止を疑ったら、救助者は気道確保や人工呼吸より先に胸骨圧迫からCPRを開始す る。
•質の高い胸骨圧迫を行うことが重要である。胸骨庄迫の部位は胸骨の下半分とし、深さ は胸が約5cm沈むように圧迫するが、6cmを超えないようにする。1分間あたり100〜 120回のテンポで胸骨圧迫を行い、圧迫解除時には完全に胸を元の位置に戻すため、力 がかからないようにする。胸骨圧迫の中断を最小にする。
•訓練を受けていない救助者は、胸骨圧迫のみのCPRを行う。
•救助者が人工呼吸の訓練を受けており、それを行う技術と意思がある場合は、胸骨圧迫 と人工呼吸を30:2の比で行う。とくに小児の心停止では、人工呼吸を組み合わせた CPRを行うことが望ましい。
•人工呼吸を2回行うための胸骨圧迫の中断は10秒以内とし、胸骨圧迫比率(CPR時間 のうち、実際に胸骨圧迫を行っている時間)をできるだけ大きく、最低でも60%とす る。
•市民によるAEDプログラム普及の重要性が国際的に確認された。AEDが到着したら、す みやかに電源を入れて、電極パッドを貼付する。AEDの音声メッセージに従ってシヨッ クボタンを押し、電気シヨックを行った後は直ちに胸骨圧迫を再開する。
• CPRとAEDの使用は、救急隊など、二次救命処置(ALS)を行うことができる救助者に 引き継ぐか、呼びかけへの応答、普段通りの呼吸や目的のある仕草が出現するまで繰り返し続ける。

病院勉強会の國吉先生の手作りテキストです。500ページ超のガイドラインを簡単にまたイラスト入りにまとめています。それでも28ページある力作です。

摂食障害の救急治療とRefeeding症候群

内科学会誌の2016年4月号が「内分泌・代謝疾患の救急~初期対応のポイント~」という特集でした。少し古くなりますが、勉強がてらまとめてみようと思います。 当院でも関連のありそうな、Refeeding症候群、低血糖性昏睡、高血糖緊急症などを順… 続く

内科学会誌の2016年4月号が「内分泌・代謝疾患の救急~初期対応のポイント~」という特集でした。少し古くなりますが、勉強がてらまとめてみようと思います。
当院でも関連のありそうな、Refeeding症候群、低血糖性昏睡、高血糖緊急症などを順次まとめて行くつもりです。

食欲不振での栄養療法
●六君子湯や経腸栄養剤に含まれている中鎖脂肪酸(MCT)6g/日以上の摂取は血中グレリンを増加させ、食欲増進につながる。
●長期の栄養低下時に、IVHで栄養を開始する場合は、水分量1000ml/日、エネルギー500ml/日程度から開始し(西崎病院ではフルカリック1号が903ml、560kcal)、200~
250kcalを2,3日おきに増量。(フルカリック2号が1003ml、820kcal)
●1000kcal/日を超えると過剰栄養による肝障害などに注意。
●脂肪乳剤はリン補充のためにも週2回以上使用。(西崎病院ではイントラリポス20%、250ml、500kcal)
●必要に応じて微量元素も補充。

Refeeding症候群
●長期間の絶食などから栄養を再開したときに、水分、リン、マグネシウム、VitB1欠乏などの急激な変動が心不全や死を引き起こすことがある。
●特に低P血症が死因になる。24~72時間以内にP値が低下し1.0mg/dl以下で乳酸アシドーシスが生じる。栄養開始時に低リン血症を注意することが重要。
●予防として脂肪乳剤の投与。(西崎病院のイントラリポスでは4mmmolのリン含有(1日量の1/3~1/4)。
●経口ならアルギーナなどのリンを多く含む栄養剤も。

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