西崎病院ブログ

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2016年1月

アメリカ糖尿病学会の糖尿病標準治療指針2016

アメリカ糖尿病学会の糖尿病標準治療指針2016(Standards of Medical Care in Diabetes 2015)が出されました。(肥満、ダイエットについて) 毎年1月にアメリカ糖尿病学会から標準治療指針が出されます。毎… 続く

アメリカ糖尿病学会の糖尿病標準治療指針2016(Standards of Medical Care in Diabetes 2015)が出されました。(肥満、ダイエットについて)

毎年1月にアメリカ糖尿病学会から標準治療指針が出されます。毎年少しづつ変わっていくようですが、今回は新しく大項目になった肥満のところを備忘録代わりにまとめてみます。

Obesity Management for the Treatment of Type 2 Diabetes
Diabetes Care 2016;39(Suppl. 1):S47–S51 | DOI: 10.2337/dc16-S009
care.diabetesjournals.org/content/39/Supplement_1

内服治療 推奨
●肥満の2型糖尿病患者の内服選択では、薬が体重に与える影響を考える事(推奨度E)
●糖尿病以外でも、体重増加につながる薬は出来るだけ減らすこと。
●抗肥満薬は、BMI27以上の2型糖尿病患者の食事・運動療法などの補助になりうる。薬のリスクとベネフィットを考慮すること。
●抗肥満薬を開始しても3か月で5%のダイエットができない場合は、中止して他の治療薬や方法を考えること。

体重が減る糖尿病の薬として、メトホルミン、αグルコシダーゼ阻害薬、GLP1阻害薬、アミリン類似薬(Symlin 日本未発売)、SGLT2阻害薬が挙げられています。DPP4阻害薬は体重は減らしも増やしもせず。インスリン分泌促進薬、チアゾリジン、インスリンは体重を増やします。
体重が増える他の併用薬として、非定型抗精神病薬(クロザピン(クロザリル)、オランザピン(ジプレキサ)、リスぺリドン(リスパダール)など)、抗うつ薬(三環形抗うつ薬、SSRI、MAO阻害薬(エフピー))、糖質コルチコイド(ステロイド)、黄体ホルモンを含む経口避妊薬、ガバペンチン(てことはリリカはどうなんでしょう、少し太る印象はありますが)、抗ヒスタミン薬、抗コリン薬が挙げられています。

FDAが認可している抗肥満薬一覧

この表の中で日本で処方できるのは、リラグルチドとトピラマートですが、いずれも適応外。逆に日本で抗肥満薬として残っているマジンドールはないようです。

ADA2015年版の糖尿病薬一覧の日本語訳
nishizakihospital.ti-da.net/e7941916.html

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糖尿病・健康長寿教室シリーズ 腎症があるときの食事の考え方(透析予防、患者向け)

腎臓の状態に応じて、食事療法はガラリと変わります。 腎臓を守るために、食事療法はとても重要です。腎臓が悪くなってくると食事療法が少し難しくなります。簡単にいうと以下のようになります。 ★糖尿病腎症2期:尿たんぱく(-)、尿中微量アルブミン3… 続く

腎臓の状態に応じて、食事療法はガラリと変わります。

腎臓を守るために、食事療法はとても重要です。腎臓が悪くなってくると食事療法が少し難しくなります。簡単にいうと以下のようになります。

★糖尿病腎症2期:尿たんぱく(-)、尿中微量アルブミン30以上の時。
炭水化物はやや少なめ、脂肪、たんぱく質はバランスよく。
      ↓
★糖尿病腎症3期:尿たんぱく(±)以上出ているとき。
2期と4期の間の食べ方。
      ↓
★糖尿病腎症4期:eGFRが30未満のとき
炭水化物、脂肪は多めに、たんぱく質は少なめに。
(実際にどんな食事療法になるかは人それぞれですので、栄養士に相談を!)

特に腎症4期になると、今までと逆に、糖分、脂質を多めにとる食事療法になります。これには理由があります。
腎臓はフィルターの役割をしています。細かな血管が網の目の様にたくさんあり、その血管が壊れて破れてしまうと、尿たんぱくが漏れてきます。ですから、尿たんぱくが(+)というのは、腎臓が今現在壊れています、ということを表しています。しかも、尿たんぱく自体がフィルターをさらに壊してしまいます。
ですから、尿たんぱくが出ないような治療をするのが大事です。そのために食事のたんぱく質を減らし、代わりに糖分、脂質を多くするのです。

他に大事なこと
●血中カリウムが高くなる人は、カリウムも減らす。
(生野菜、生果物を控える。茹でて茹で汁を捨てるとカリウムは抜けます)
●塩分は1日6g以下を目標に!
●肥満の人は少しダイエットを。ふつう~やせ型の人は少し多めのカロリーを。

炭水化物は低GI(グリセミックインデックス)のものがおススメ。
脂肪は植物性、常温でも液体、新鮮なものがおススメ。

腎臓を守る食事療法は難しいので、栄養士、糖尿病療養指導士と話しながら覚えるのが良いでしょう。

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自殺は予防できる

健康寿命をのばすために、一つ忘れてならないのが自殺だと思います。 15~39歳のまさに未来ある世代の死亡率一位は自殺です。 沖縄県の自殺死亡率は10万人当たり20人前後で、日本平均と同じくらいです。 平成26 年中における自殺の状況 内閣府… 続く

健康寿命をのばすために、一つ忘れてならないのが自殺だと思います。
15~39歳のまさに未来ある世代の死亡率一位は自殺です。

沖縄県の自殺死亡率は10万人当たり20人前後で、日本平均と同じくらいです。

平成26 年中における自殺の状況
内閣府自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課 資料より

ということで、自殺を防ぐために一般内科の医者に何ができるか少し勉強してみました。
WHOのリポートを自殺予防対策センターが翻訳しています。
「自殺を予防する 世界の優先課題」Preventing suicide; A global imperative
ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/pdf/topics_140905_1.pdf

一般的にWHOのリポートは先進国よりも発展途上国に重点を置いて書かれていますが(われわれ先進国の人間のバイアスかもしれませんが)、自殺予防に関しては、ハイテクは要りませんから大変勉強になりました。お金、設備よりも精神的なフォローが大事そうです。備忘録がてらまとめてみます。

●日本の自殺率は先進国で高い(悪い)方。
●過去の自殺企図は自殺の最大の危険因子
●自殺手段へのアクセス制限(農薬、銃器、特定の医薬品、橋に柵、ホームドアなど)は非常に効果的な自殺予防となる。
●自殺を口にする人は、おそらく援助や支援を求めている
⇒自殺を口にしたら見過ごさない!
●周囲の人がゲートキーパーとなり、治療につなげる戦略はエビデンスは少ないもののベストプラクティスである。
●高所得国は低中所得国より自殺死亡率が多少高い(10万あたり12.7対11.2人)
●世界的には男性の自殺死亡は女性の3倍だった。(国によってばらつきあり)
●2000年以降世界的には自殺率は急速に減少している。
●アメリカは全自殺死亡の46%が銃器!他の高所得国では4.5%。
●メディアによる責任ある自殺報道は自殺死亡率を減少させる。
●オンラインチャット、オンラインプログラムは効果的。
●電話によるヘルプラインも効果的。
●一般市民向けの意識向上のキャンペーンは、地域の態度に明確なインパクトがあり、自殺に対する悪い先入観(スティグマ)を減らす。
●自殺についてのスティグマが広がっているため自殺を考えている人々の多くは誰に話してよいかわからない。包み隠さず話すことは、自殺を考えている人に自殺関連行動をうながすよりよりはむしろ他の選択肢や決断を考え直す時間を与え、自殺を予防する。
●独居の高齢者にとっては、社会的孤立や孤独感は自殺の重要な寄与因子となりうる。
●うつ病とアルコール依存が最も関連する精神障害。自殺の生涯リスクは気分障害で4%、アルコール依存症で7%、双極性障害で8%、統合失調症で5%。
●慢性疼痛がある人は、自殺関連行動が2~3倍多い。これにはがん、糖尿病、HIVを含む。
●低レベルのセロトニンは、気分障害、統合失調症やパーソナリティ障害を有する患者の深刻な自殺企図と関連する。
●自殺の家族歴は自殺や自殺企図の強力な危険因子。
●人によっては、生き延びたかったとしても、例えば衝動的に農薬を飲んでなくなることもあるかもしれない。適切なタイミングで情緒的支援にアクセスすることで、自殺は予防できる可能性がある。
●自殺の危険の高まりはしばしば短期的で状況特有である。自殺念慮を再び抱くことはあるかもしれないが永遠ではなく、依然自殺念慮があった人や自殺企図をした人でも長生きすることができる。
●精神的、身体的に満たされた状態(well-being)を促進する健康的なライフスタイルに含まれるのは、定期的な運動やスポーツ、適度な睡眠と食事、アルコールや薬物の健康への影響への考慮、健康的な人間関係や社会とのかかわり、そして効果的なストレスマネジメントである。
●日本において、2009年以降自殺死亡数は減少した。若年者の自殺死亡率は上昇するも、中高年と高齢者の自殺死亡率が低下している。
●オーストラリアでは、より責任あるメディア報道のガイドラインを作成。費用は1人の自殺を予防するのに、2万7千豪ドル。

まとめ
●自殺は予防できる。
●医者は(精神科以外でも)重要なゲートキーパー。
●まずは話を聞く。
●沖縄なら南部医療センターなど精神科救急のある病院を。
その他  自殺総合対策窓口
沖縄県保健医療部 健康長寿課 精神保健班098-866-2209
●いろいろなセーフティネットに引っかかるように。

www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2814%2961213-7/abstract
School-based suicide prevention programmes: the SEYLE cluster-randomised, controlled trial

ikiru.ncnp.go.jp/
自殺予防総合対策センター(国立精神・神経医療研究センター内)

www.pref.okinawa.jp/gatekeeper/gatekeeper.html
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